ASRock DeskMeet X300のCPUとGPUを換装したので、ベンチマークテストで性能および最高温度・消費電力を比較しました。DeskMeet X300の主な特徴は以下の通りです。
- 容量8Lのコンパクトサイズ
- AMD X300チップセット搭載
- AMD第4世代Ryzenプロセッサ対応(AMD AM4ソケット、最大TDP 65W)
- 最大128GBの4 x DDR4-3200MHz DIMMメモリに対応
- Ultra M.2スロットを装備 (PCIe Gen 3 x4)
- 最大3台のストレージ(1台分はGPUと兼用)を搭載可能(2 x SATA 6Gbポート、RAID 0/1機能に対応)
- DisplayPort、HDMI、VGA 映像出力端子装備
- 500W 電源 (80+ Bronze)
- 最長200mmのグラフィックボードに対応(8-pinまで。PCI-eからの75Wと合わせて225Wまで)
- 最大高さ ≦ 54mmのCPUクーラーに対応
- 引出設計やカスタマイズされた電源ケーブル&インターフェースにより簡単セットアップ
PCのスペック
従来使用していたパソコンの構成は、下記1のRyzen 5 3600 + GeForce GTX 1050 Ti (4GB)です。そこからまず、CPUをRyzen 7 5700Xに換装し(2の構成)、その後、GPUをGeForce RTX 4060 Ti (16GB)に換装しました(3の構成)。一番気になったのは、容量8LのコンパクトサイズPCが、Ryzen 7 5000シリーズやRTX 4000シリーズの発熱に耐えられるのか、という点です。CPUファンには定評のあるNoctua NH-L9a AM4を用いました。
- AMD Ryzen 5 3600 + NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti (4GB)
- AMD Ryzen 7 5700X + NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti (4GB)
- AMD Ryzen 7 5700X + NVIDIA Geforce RTX 4060 Ti (16GB)
ASRock DeskMeet X300ベアボーンを用いた自作ミニPCの詳細については、以下の記事をご覧下さい。
画像生成AIに適したミニPCの自作 (DeskMeet X300)ベンチマークソフトウェア
今回ベンチマークテストに利用したソフトウェアは以下の5種類です。Cinebench R23はCPUのベンチマークソフトウェアです。3DMarkとFINAL FANTASY XVはゲーム用のベンチマークソフトウェアであり、CPUとGPUの両方の性能を評価することができます。Fooocusは画像生成AIツールであり、これだけはベンチマーク用のソフトウェアではありません。Fooocus では、SDXL (Stavble Diffusion XL)ベースの画像を簡単に生成することができます。CrystalDiskMarkはストレージ用のベンチマークソフトウェアで、ストレージの読み書きのスピードを測定することができます。
- Cinebench R23
- 3DMark
- FINAL FANTASY XV
- Fooocus
- CrystalDiskMark
ベンチマーク実行時の最高温度と消費電力の測定は、HWMonitorで行いました。
Windows PC用ベンチマークソフトウェアのインストールベンチマークテストの結果
Cinebench R23
Cinebench R23によるベンチマークテストの結果は、期待通り、Ryzen 7 5700Xに換装した分、性能アップしました。
性能 | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
Multi Core (pts) | 8,817 | 12,567 | 12,613 |
Single Core (pts) | 1,190 | 1,525 | 1,518 |
MP Ratio | 7.41 | 8.24 | 8.31 |
Cinebench R23実行時の最高温度 (CCD, Cores (Max)) と消費電力 (CPU Package) を見ると、Ryzen 5 3600からRyzen 7 5700Xに換装することで、どちらも低下しました。最高温度で10度程度、消費電力で10W強も下がっており、これは大きな収穫でした。
温度、消費電力 (Multi Core, Max) | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
CCD (℃) | 96.5 | 87.0 | 88.5 |
Cores (Max) (℃) | 95.0 | 84.7 | 84.4 |
GPU Hot Spot (℃) | 50.8 | 51.5 | 69.9 |
GPU (℃) | 42.0 | 43.9 | 59.0 |
CPU Package (W) | 87.98 | 76.02 | 76.08 |
GPU (W) | 35.77 | 35.67 | 29.13 |
3DMark
3DMarkによるベンチマークテストの結果は、期待通り、Ryzen 7 5700Xに換装時のCPU scoreの性能向上と、Geforce RTX 4060 Tiに換装時のGraphics scoreの大幅な性能向上を確認することができました。トータルスコアであるTime Spy Scoreを見ると、Ryzen 7 5700Xの効果は小さく、Geforce RTX 4060 Tiの効果が圧倒的に大きいことが確認できます。
性能 | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
Time Spy Score | 2,550 | 2,605 | 12,635 |
Graphics score | 2,296 | 2,305 | 13,326 |
CPU score | 6,882 | 9,953 | 9,768 |
Graphics test 1 (FPS) | 15.25 | 15.28 | 88.13 |
Graphics test 2 (FPS) | 12.95 | 13.03 | 75.44 |
CPU test (FPS) | 23.12 | 33.44 | 32.82 |
3DMark実行時には、Ryzen 5 3600からRyzen 7 5700Xに換装することで、CPUの最高温度 (CCD, Cores (Max)) と消費電力 (CPU Package) はどちらも低下しました。一方、GeForce GTX 1050 TiからGeForce RTX 4060 Tiに換装することで、GPUの最高温度 (GPU Hot Spot, GPU (℃)) と消費電力 (GPU (W)) は大幅に上昇しました。GPU Hot Spotは107.3℃に達しており、やや危険な状態です。本構成のPCでは、3DMarkのプレイは控えることにします。
温度、消費電力 (Max) | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
CCD (℃) | 90.5 | 80.8 | 85.3 |
Cores (Max) (℃) | 87.7 | 73.1 | 81.3 |
GPU Hot Spot (℃) | 82.2 | 82.5 | 107.3 |
GPU (℃) | 73.0 | 74.0 | 86.0 |
CPU Package (W) | 82.83 | 76.02 | 75.97 |
GPU (W) | 70.20 | 70.62 | 164.66 |
FINAL FANTASY XV
FINAL FANTSY XVによるベンチマークテストの結果は、Ryzen 7 5700Xへの換装時には性能向上を確認できませんでしたが、Geforce RTX 4060 Tiへの換装時に大幅な性能向上を確認することができました。
性能 | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
スコア | 2,820 | 2,805 | 12,130 |
評価 | やや重い | やや重い | 非常に快適 |
FINAL FANTASY XV実行時には、Ryzen 5 3600からRyzen 7 5700Xに換装することでCPUの最高温度 (CCD, Cores (Max)) は低下しましたが、消費電力 (CPU Package) はやや上昇しました。一方、GeForce GTX 1050 TiからGeForce RTX 4060 Tiに換装することで、GPUの最高温度 (GPU Hot Spot, GPU (℃)) は上昇傾向にあり、消費電力 (GPU (W)) は大幅に上昇しました。この影響で、CPUの最高温度も上昇してしまいました。GPU Hot Spotは95.3℃に達しましたが、GPUの最高温度は80.0℃以下に収まっているので、FINAL FANTASY XVのプレイは楽しむことができそうです。
温度、消費電力 (Max) | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
CCD (℃) | 89.8 | 85.5 | 89.8 |
Cores (Max) (℃) | 81.1 | 75.1 | 83.4 |
GPU Hot Spot (℃) | 88.3 | 87.9 | 95.3 |
GPU (℃) | 80.0 | 80.0 | 78.0 |
CPU Package (W) | 73.14 | 75.07 | 75.99 |
GPU (W) | 70,09 | 70.76 | 161.93 |
Fooocus
Fooocusを用いたベンチマークテストは、Promptにdragonを追加し「1girl, dragon」として実行しました(「1girl, 」は何故かデフォルトで設定済み)。PerformanceはQualityに設定し、比較のためSeedを12345に固定しました(毎回同じ画像を生成)。画像の生成枚数2枚と解像度896×1152およびNegative PromptはFooocusのデフォルト設定を用いました。
Fooocusを用いたベンチマークテストの結果は、Ryzen 7 5700Xへの換装時には性能向上を確認できませんでしたが、Geforce RTX 4060 Tiへの換装時に大幅な性能向上を確認することができました。生成系AI(画像生成)ではGPUの性能が重要であることが確認できました。
性能 | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
Total time (seconds) | 1232.39 | 1207.27 | 71.44 |
Fooocus実行時には、Ryzen 5 3600からRyzen 7 5700Xに換装することで、CPUの最高温度 (CCD, Cores (Max)) は低下しましたが、消費電力 (CPU Package) はやや上昇しました。一方、GeForce GTX 1050 TiからGeForce RTX 4060 Tiに換装することで、GPUの最高温度 (GPU Hot Spot, GPU (℃)) と消費電力 (GPU (W)) は大幅に上昇しました。GPU Hot Spotは99.7℃に達しましたが、GPUの最高温度は81.0℃に収まっており、Fooocusはゲームソフトと異なり長時間実行し続けることも余り無いため、問題なく使用することができそうです。
温度、消費電力 (Max) | Ryzen 5 3600 + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + GTX 1050 Ti | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti |
---|---|---|---|
CCD (℃) | 91.8 | 78.0 | 75.8 |
Cores (Max) (℃) | 85.4 | 68.1 | 70.1 |
GPU Hot Spot (℃) | 87.8 | 86.3 | 99.7 |
GPU (℃) | 79.0 | 78.0 | 81.0 |
CPU Package (W) | 72.80 | 76.01 | 75.93 |
GPU (W) | 75.23 | 75.83 | 162.70 |
Fooocusをもっと長時間実行し続けた時のデータを取得するために、Image Numberを最高の32画像に設定してデフォルトの2画像のときと比較しました。画像は16倍の枚数を生成したのですが、オーバーヘッドの分が無くなるためか、15.2倍の計算時間で実行終了しました。
性能 | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti(2画像) | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti(32画像) |
---|---|---|
Total time (seconds) | 71.44 | 1083.95 |
Fooocusで32枚の画像を作成したときのGPUの最高温度 (GPU Hot Spot, GPU (℃)) はそれほど上昇しませんでしたが、CPUの最高温度 (CCD, Cores (Max)) が大幅に上昇してしまいました。CCDが90.3℃に達してしまったのですが、Coresは83.3℃で収まっているため、直ぐに問題が発生するという状況では無さそうです。しかしながら、CPUもGPUも温度がかなり高くなってしまうので、DeskMeet X300を労わりながら利用したいと思います。
温度、消費電力 (Max) | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti(2画像) | Ryzen 7 5700X + RTX 4060 Ti(32画像) |
---|---|---|
CCD (℃) | 75.8 | 90.3 |
Cores (Max) (℃) | 70.1 | 83.3 |
GPU Hot Spot (℃) | 99.7 | 101,9 |
GPU (℃) | 81.0 | 82.0 |
CPU Package (W) | 75.93 | 75.33 |
GPU (W) | 162.70 | 164.11 |
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkを用いて、DeskMeet X300に搭載しているM.2 2280 NVMe 2TB (PCIe Gen 3×4) (OSをインストール)と、内蔵SSD 2TB 2パック(RAID0:ストライピングを構成)の読み書きのスピードを測定しました。
M.2の測定結果は下記となり、商品の説明に記載の「読み込み1800MB/s 書き込み1500MB/s」よりかなり良い結果を得ることができました。
SSDは2台でRAID0を構成しているので、商品の説明に記載の「最大読み込み/書取り速度560/530 MB/sが可能です」からほぼ期待通りの結果を得ることができました。
まとめ
DeskMeet X300のCPUをAMD Ryzen 5 3600からAMD Ryzen 7 5700Xに換装したところ、技術の進歩の恩恵により、Cinebench R23 Multi Coreのスコアが42.5%上昇したにも関わらず、最高温度と消費電力が共に低下しました。
GPUをNVIDIA GeForce GTX 1050 Ti (4GB) からNVIDIA GeForce RTX 4060 Ti (16GB) に換装したところ、消費電力は2倍強に上昇したものの、3DMarkのTime Spy ScoreとFINAL FANTASY XVのスコアが共に4~5倍にアップしました。画像生成ソフトウェアのFooocusに至っては、16.9倍もの高速化が達成されたことにより、使い勝手が劇的に向上しました。
DeskMeet X300のCPUをAMD Ryzen 7 5700Xに、GPUをNVIDIA GeForce RTX 4060 Ti (16GB) に換装した構成では、可能な熱対策を施している場合においても、PCの発熱問題には注意が必要です。負荷の高いゲームを長時間に渡ってプレイするような用途には、残念ながら向いているとは言えません。
画像生成AIに適したミニPCの自作 (DeskMeet X300)